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実家を売却する前の遺品整理|査定額を下げないための「残置物」撤去ルール

整理された和室のイメージ画像

監修:遺品整理士 佐藤美知子


目次

  1. 「残置物」が査定額を下げる?知らないと損する不動産の常識
  2. 査定額に響きやすい「危険な残置物」5つのケース
  3. 売却前の遺品整理はいつ始める?タイミングの目安と注意点
  4. 自分でやるか、業者に頼むか——残置物撤去の2つの選択肢
  5. 遺品整理業者と不動産業者を上手に連携させるコツ
  6. まとめ:実家の査定額を守るために、まず「残置物」を知ることから



「親が亡くなって、実家をどうするか決めなければならない。売却しようと思っているけど、まず何をすればいいんだろう——」

そんな気持ちで、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。大切な方を亡くした後、悲しみの中で相続や不動産の手続きを進めるのは、本当に心身ともに負担の大きいことです。

実家の売却を考えるとき、多くの方が見落としがちなのが「残置物(ざんちぶつ)」の問題です。家の中に残された家財道具・家電・衣類などをそのままにしておくと、不動産の査定額が予想以上に下がってしまうケースがあります。

この記事では、遺品整理の専門家として数百件以上のご依頼に携わってきた橙堂スタッフの視点から、査定額を守るために知っておきたい「残置物」の基礎知識と、撤去のルールをわかりやすくお伝えします。難しい不動産用語も、できるだけ平易な言葉に置き換えながら解説しますので、初めての方もどうぞ安心してお読みください。


1. 「残置物」が査定額を下げる?知らないと損する不動産の常識

実家じまいイメージ画像

残置物とは何か?


「残置物」とは、不動産取引のうえでは「売却する物件の中に残されたままの家財・家電・荷物」のことを指します。亡くなった親の家具、タンスの中の衣類、物置の道具類、納戸に積み上げられた段ボール -こうしたものすべてが「残置物」に当たります。

法的には、残置物があるままの物件を売ることも不可能ではありません。ただし、「残置物あり」の状態で売り出した場合、買い手側が「自分で処分しなければならない」と判断し、その処分費用の分だけ値引きを要求してくるケースが非常に多いのです。

査定価格はどのくらい変わる?

先日、橙堂で遺品整理をご依頼いただいたお客様(埼玉県・60代女性)のケースでは、お母様が残された一軒家の売却前に残置物整理を依頼されました。当初、不動産業者から「残置物あり」の状態で「2,100万円程度」という査定を受けていましたが、遺品整理完了後に再査定をしたところ「2,380万円」という評価が出ました。残置物を撤去するだけで、約280万円もの差が生まれたのです。

もちろんこれは一例であり、物件の立地や状態によって金額の差は変わります。ただ、一般的に残置物の処分費用(業者に依頼した場合の相場:1Kで3〜8万円、2LDKで8〜20万円程度)を差し引いても、先に整理しておいた方が有利なケースが多いことは、私たちの経験からもはっきり言えます。

2. 査定額に響きやすい「危険な残置物」5つのケース

残置物の中でも、特に査定額に悪影響を与えやすいものがあります。以下の5つは、ぜひ優先的に確認・撤去を検討していただきたい「要注意カテゴリ」です。

① 大型家電・白物家電

冷蔵庫・洗濯機・エアコン・テレビなどは、「家電リサイクル法」の対象品目であり、一般ごみとして捨てることができません。買い手側がこれらを処分するには、メーカーや指定取引場所に持ち込む費用(冷蔵庫なら3,000〜6,000円程度)が別途かかります。動作しない古い家電が複数台残されていると、買い手にとって「負動産」に映ることも。

私たちの経験上、大型家電が数台残っているだけで、買主から「その分まけてほしい」という交渉が入ることは珍しくありません。

② 大型家具(タンス・食器棚・仏壇)

重量があり処分が難しい大型家具も、買い手にとっては「自分で業者を手配しなければならない」という心理的・金銭的ハードルになります。特に仏壇は、「魂抜き(閉眼供養)」という宗教的な手続きを踏んでから処分する必要があり、作法を知らない買い手には大きな負担です。

「魂抜き」とは具体的にどういう手続きなのか?

魂抜きとは、仏壇に宿るとされる仏様の魂を僧侶に読経していただき、仏壇を「ただの家具」に戻す儀式です。これを経ずに仏壇を処分することは、仏教的な観点からは避けるべきとされています。

実際に手配する側の負担を具体的に挙げると、次のようになります。

  • 僧侶への依頼:故人が帰依していたお寺(菩提寺)に連絡するのが一般的ですが、どこのお寺なのかを知らない買い手には、そもそも問い合わせ先の特定からはじまります。菩提寺がない場合は、専門の寺院紹介サービスを利用することになります。
  • 費用の目安:読経料(お布施)として1万〜3万円程度が相場です。これに加え、僧侶が自宅に出向く場合の「出張料」が別途発生するケースもあります。
  • スケジュール調整の手間:お寺の予定・法事シーズンなどによっては、手配から実施まで2〜4週間かかることもあります。
  • 撤去・処分費用:魂抜きが完了してからようやく業者に搬出を依頼できます。大型仏壇の処分費用は、サイズによって2万〜5万円程度が目安です。

これらすべてを「知らない土地の知らないお寺に連絡し、日程を調整し、費用を払って進める」のが買い手の現実です。売り手側が事前に済ませておくだけで、買い手の心理的ハードルを大きく下げ、値引き交渉の余地を削ることができます。

③ 大量の衣類・布団

タンスや押し入れに詰め込まれた大量の衣類や布団は、見た目の印象以上に処分コストがかかります。古着として価値のあるものは売却できることもありますが、虫食いや湿気のある布団類は産業廃棄物同様の扱いで処理費用が高くなるため、買い手にとってリスクとして映ります。

④ 物置・納戸・ガレージの荷物

「もしかして何か価値のあるものが入っているかも」という心理から後回しにされがちなのが、物置・納戸・ガレージです。ただし買い手の目線では、中身が見えない・量が不明な残置物がある空間はリスクに映ります。内見の際に「整理が行き届いていない」という印象を与えると、交渉の余地を与えてしまうことにもなりかねません。

⑤ 庭・外構の廃棄物

屋内だけでなく、庭に放置された農具・廃材・古タイヤなど「外構の残置物」も見落とされがちです。外回りの状態は物件の第一印象に直結するため、内覧前に必ず整理しておくことをおすすめします。

外構の乱れは「値引き交渉の口実」になる

買い手が内覧に訪れるとき、最初に目にするのは「外から見た家の状態」です。門扉の前に廃材が積まれていたり、庭に錆びた農具が散乱していたりすると、それだけで「管理が行き届いていない家」という印象を与えます。

問題はその印象にとどまりません。内覧後の価格交渉の場面で、「庭の廃棄物の処分費用がかかるので」という理由を添えて、具体的な値引き要求の根拠として使われるケースが実際に起きています。外構の残置物の処分費用は見積もりが出しやすく(古タイヤ1本の処分費用:500〜1,000円、廃材・農具などの一式回収:2〜5万円程度)、買い手にとって「いくら引いてほしいか」という数字を提示しやすい交渉材料になるのです。

逆に言えば、外回りを整えておくだけで、その交渉の余地をあらかじめ塞ぐことができます。屋内の片付けと並行して、外構・庭まわりも早めに確認しておくことをおすすめします。

3. 売却前の遺品整理はいつ始める?タイミングの目安と注意点

スケジュール管理イメージ

「いつ始めればいいの?」というのは、ご依頼者様から最もよくいただく質問のひとつです。グリーフ(悲嘆)の状態にある中で、冷静にスケジュールを立てるのは簡単ではありません。

一般的な目安:相続放棄の期限に注意

まず最初に確認しておきたいのが、相続放棄の期限(原則3ヶ月)です。相続放棄をするかどうかを検討している場合、遺品を勝手に処分してしまうと「相続を承認した」とみなされるリスクがあります。迷っている段階では、遺品には手をつけず、まず弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

相続の方針が固まった後は、以下のような流れを参考にしてください。

  1. 相続方針の確定(相続放棄・単純承認・限定承認を決める)
  2. 不動産業者に相談・査定依頼(残置物がある状態でも相談可能)
  3. 遺品整理の開始(業者に依頼するか、自分たちで行うか決める)
  4. 残置物撤去完了後、再査定
  5. 売却活動の開始

「急いで処分しなければ」という焦りは禁物

よくあるのが、「早く売りたいから、とにかく中身を片付けてしまおう」と急いで遺品を処分してしまうケースです。しかしその中に、高価な骨董品・着物・金融資産の証書などが混在していることは少なくありません。

こうしたものが出てきた際の基本的な流れは以下の通りです。

① 「捨てない・売らない・動かさない」を徹底する
整理の途中でそれらしい品物が出てきても、自己判断で処分・売却しないことが原則です。特に金融資産の証書類は、相続財産に影響することがあるため、専門家(司法書士・弁護士)への確認が先決です。

② 遺品整理業者に「仕分け保留」の依頼をする
信頼できる遺品整理業者であれば、整理作業中に「これは価値があるかもしれない」と判断したものを、依頼者の確認を得ながら別途まとめておく「仕分け保留」の対応をしてくれます。業者に依頼する前に「貴重品の可能性があるものは必ず確認してほしい」と伝えておくとよいでしょう。

③ 古物商・買取業者に査定を依頼する
着物・骨董品・貴金属については、古物商の資格を持つ買取業者に査定を依頼することで、適切な価値の見立てが得られます。遺品整理業者が古物商の許可を持っているか、または提携する買取業者を紹介してもらえるかを事前に確認しておくと、別途業者を探す手間が省けます。査定は多くの場合無料で行われますので、「価値があるかどうか分からない」段階でも気軽に相談できます。

④ 査定額を整理費用に充当できるケースもある
買取が成立した場合、その金額を遺品整理の費用と相殺してもらえる業者もあります。「買取込みで整理費用を抑えられるか」を見積り時に確認しておくと、思わぬコスト削減につながることがあります。

4. 自分でやるか、業者に頼むか——残置物撤去の2つの選択肢

遺品整理イメージ

残置物の撤去は、大きく「自分たちで行う方法」と「業者に依頼する方法」の2択です。それぞれのメリット・デメリットを整理します。

自分たちで行う場合

メリット

  • 費用を大幅に抑えられる
  • 遺品に触れながら、故人を偲ぶ時間を持てる
  • 誰に見せたくないものを自分たちで処理できる

デメリット

  • 体力・時間がかかる(2LDKで延べ数日〜1週間以上)
  • 家電・大型家具の処分方法が複雑でわかりにくい
  • 「捨てていいものか判断できない」ものが出てきたとき困る
  • 感情的に辛くなりやすい

自分たちで行う場合、大型家電の処分には「家電リサイクル法」の手続きが必要で、持ち込み先の確認・予約・搬出がセットになります。また、大量の一般ごみを処分するには、自治体のルールに従って粗大ごみ収集を予約するか、処理場への持ち込みが必要です。体力と時間に余裕があり、兄弟や親族で協力できる体制があれば、自分たちで進めることは十分可能です。

業者に依頼する場合

メリット

  • 短期間(1日〜数日)で完了できる
  • 家電・大型家具の処分もすべて任せられる
  • 貴重品の仕分けを手伝ってもらえる場合がある
  • 体力・精神的な負担を大幅に軽減できる

デメリット

  • 費用がかかる(1Kで3〜8万円、2LDKで8〜20万円程度が相場)
  • 悪質な業者に当たると高額請求や不法投棄のリスクがある

残置物撤去の「自分でやる場合」と「業者に依頼する場合」について、ご要望の4項目で比較表を作成します。

項目自分でやる場合業者に依頼する場合
費用大幅に抑えられる費用がかかる。相場は1Kで3〜8万円、2LDKで8〜20万円程度
日数長期間。2LDKで延べ数日〜1週間以上かかる短期間。1日〜数日で完了できる
手間体力・時間がかかり、大型家電や家具の処分方法が複雑で分かりにくい家電・大型家具の処分含めすべて任せられ、体力的な負担を大幅に軽減できる
心理的負担感情的に辛くなりやすく、「捨てていいものか判断できない」ときに困る精神的な負担を大幅に軽減できる。貴重品の仕分けを手伝ってもらえる場合がある

業者を選ぶ際は、「古物商許可」を持っているかを必ず確認してください。許可証のない業者は、廃棄物を適切に処理できない可能性があり、不法投棄に加担してしまうリスクがあります。

遺品整理の費用・相場に関する記事はこちら→【埼玉西部・東京西部】遺品整理の費用相場

5. 遺品整理業者と不動産業者を上手に連携させるコツ


「遺品整理業者と不動産業者、どちらに先に相談すればいいの?」-これも非常によくある質問です。

私たちの答えは「両方に早めに相談する」です。2つの業者は対立するものではなく、うまく連携させることで、時間もコストも節約できます。

先に不動産業者に相談するメリット

不動産業者に先に査定を依頼すると、「この物件の売却を有利にするために、どこまで整理すればいいか」という具体的なアドバイスがもらえます。「仏壇は撤去が必要だが、食器棚はそのままでも買い手がつきやすい」といった判断を、不動産のプロの目線でしてもらえるため、遺品整理の範囲を絞り込めるメリットがあります。

遺品整理業者に先に相談するメリット

一方、遺品整理業者(橙堂のような会社)に先に相談すると、遺品の中に買取価値のある品物が含まれているかどうかを確認してもらいながら整理を進めることができます。着物・骨董品・古い家具などに思わぬ価値がある場合、買取として引き取ることで整理費用の一部を相殺できるケースもあります。

理想的な進め方

① 不動産業者に「残置物あり」の状態で現地相談・仮査定を依頼

② 「どこまで整理すれば有利か」のアドバイスをもらう

③ 遺品整理業者に連絡し、訪問見積りを依頼

④ 貴重品・買取品の仕分けをしながら残置物を撤去

⑤ 撤去完了後に不動産業者へ連絡し、正式査定・売却活動へ

この流れで進めると、無駄な出費や「やらなくてよかった整理」を防ぎながら、スムーズに売却活動へと移行できます。

橙堂では、ご希望のお客様に対して、信頼できる不動産業者様をご紹介することも可能です(地域によって対応が異なりますので、まずはご相談ください)。

6. まとめ:実家の査定額を守るために、まず「残置物」を知ることから

実家を売却する前の遺品整理と残置物撤去について、ここまでお読みいただきありがとうございました。最後に、この記事の大切なポイントをまとめます。

  • 残置物は査定額に直結する。撤去しておくことで、数十万〜数百万円の差が生まれることも珍しくない
  • 特に要注意なのは「大型家電・大型家具・仏壇・物置の荷物・庭の廃棄物」の5カテゴリ
  • 相続方針を固めてから動き出すことが原則。焦って処分すると相続放棄に影響することも
  • 自分でやるか業者に頼むかは「時間・体力・費用」のバランスで判断する
  • 不動産業者と遺品整理業者の両方に早めに相談することが、最もスムーズな売却への近道

「何から手をつければいいか分からない」「業者に頼んでもいいものか迷っている」-そんな気持ちのままで大丈夫です。まずは一度、気軽にご相談いただければと思います。

生前整理はいつ始めるべきかの記事はこちら→「生前整理」はいつ始めるのが正解?60代・70代の年代別スタートガイド


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