空き家を放置するとどうなる?固定資産税・特定空き家のリスクと、売却・解体までの対処法
監修:遺品整理士 佐藤美知子
目次
- 空き家を放置すると何が起こる?5つのリスク
- 「特定空き家」に指定されると固定資産税が最大6倍になる
- 2023年改正で新設「管理不全空き家」も要注意
- 空き家を「どうするか」——4つの選択肢と判断のポイント
- 空き家対策の前に必要な「中の片付け」——遺品整理・生前整理との関係
- まとめ——「放置」が一番コストが高い

「相続した実家が、気づけばもう3年も空き家になっている……」
親御さんが施設に入られたり、あるいはお亡くなりになったりして、誰も住まなくなった実家をどうするか——。すぐには決断できないまま、「とりあえず固定資産税だけ払っておけばいい」と後回しにしているご家族は、実はとても多くいらっしゃいます。
そのお気持ちは、よく分かります。思い出が詰まった家を手放すのは、それだけで心が痛むことですし、「何から手をつければいいか分からない」という戸惑いも当然です。
ただ、残念なことに、空き家は放置するほど「問題」が複利のように積み重なっていきます。建物の劣化、害虫の発生、防犯リスク、近隣トラブル——そして最終的には、固定資産税が跳ね上がる「特定空き家」の指定。「少しだけ待とう」のつもりが、数年後に大きな後悔になるケースを、私たちはこれまで数多く見てきました。
この記事では、空き家を放置することで実際に何が起こるのかを具体的にお伝えし、「ではどうすればよいか」という出口まで一緒に考えていきます。難しい法律用語も、できるだけ分かりやすく解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
1. 空き家を放置すると何が起こる?5つのリスク
空き家を放置したときのリスクは、大きく5つに整理できます。いずれも「最初は小さな問題」でも、時間が経つにつれて対処コストが膨らむ性質を持っています。
① 建物の劣化——雨漏り・腐食は思った以上に早い
人が住んでいる家は、日々の生活の中で自然と「換気」や「小さな補修」が行われています。窓を開ければ湿気が逃げ、異変に気づけばすぐ修繕できます。ところが空き家になると、誰も換気をせず、雨漏りにも気づかないまま放置されます。
木造住宅の場合、湿気がこもり始めると1〜2年で柱や土台が腐食し始めることもあります。特に気密性の低い古い家ほど、この劣化スピードは速い傾向があります。先日ご相談いただいたお客様の事例では、「5年ほど前から誰も住んでいない実家」を久しぶりに訪れたところ、雨漏りによって2階の床が抜けかけていたというケースがありました。修繕費だけで数百万円かかるケースも珍しくありません。
残された家財(残置物)が原因となる劣化も深刻です。例えば、空き家内に放置された飲料や食材、あるいは腐敗物などから液漏れが起こると、そこから床や建材の腐食が進み、最悪の場合、床が抜け落ちるなど建物を大きく毀損するケースも確認されています。
後々「売ろう」「貸そう」と思っても、劣化が激しければ解体費用のほうが先に来てしまう -それが空き家劣化の現実です。
② 害虫・害獣の棲みつき——シロアリ・ネズミ・ハチの巣
換気されない暗くじめじめした空間は、シロアリ・ゴキブリ・ムカデ・ネズミ・ハクビシン、さらにはスズメバチにとって格好の棲みかになります。
とくにシロアリは静かに、そして素人目には見えにくい形で木材を蝕みます。気づいたときには柱の中が空洞になっていた、というケースも実際にあります。駆除費用は侵食の程度によって異なりますが、重篤な場合は50〜100万円規模の出費になることも。
また、ハチの巣は近隣の方が蜂に刺されるリスクにもつながります。後述する「近隣トラブル」の原因になることも多く、早期発見・対処が非常に重要です。
③ 防犯リスク——不法侵入・放火・不法投棄の標的に

人の気配がなく、管理されていない家は、残念ながら犯罪者の目にも「使いやすい場所」として映ります。不法侵入による占拠・住み着き、空き家を利用した違法薬物の製造・使用、放火、不法投棄——こうしたトラブルは全国的に報告されています。
警察庁の調査でも、空き家を絡んだ不審者情報・火災は増加傾向にあります。万が一、あなたの空き家が放火の被害に遭い、隣家に類焼した場合、損害賠償を求められる可能性もゼロではありません(失火責任法との関係は専門家への確認が必要ですが、管理義務を怠った場合は責任を問われるケースもあります)。
「うちの実家はそんな場所じゃない」と思われる方もいるかもしれませんが、郊外の住宅地でも、表通りからは分かりにくい場所にある家ほど被害に遭いやすいのが現実です。
④ 近隣トラブル——雑草・倒木・外壁落下で損害賠償も
空き家の庭が管理されていないと、雑草が隣地に侵入したり、枯れた樹木が倒れて隣の家の塀や車を傷つけたりすることがあります。台風シーズンには屋根瓦や外壁の一部が飛散し、通行人や近隣の住宅に被害を与える危険性も高まります。
こうした場合、所有者は「工作物責任」(民法717条)に基づいて損害賠償責任を負う可能性があります。「遠方に住んでいて管理できなかった」という事情は、残念ながら法的には免責理由にはなりません。
実際に、雑草トラブルで隣人との関係が悪化し、「実家の思い出が台無しになった」とおっしゃるご家族の話を聞くたびに、早めの対応の大切さを痛感します。
⑤ 行政からの指導——「特定空き家」に指定される前兆
上記のリスクが積み重なると、市区町村から「管理不全ではないか」と見られるようになります。自治体の空き家担当部署から調査が入り、改善勧告が届くケースも増えています。この段階で手を打てれば問題は最小限で済みますが、放置し続けると次に説明する「特定空き家」の指定へと進んでしまいます。
2. 「特定空き家」に指定されると固定資産税が最大6倍になる
「特定空き家」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?これは、2015年に施行された**「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」**で定義された区分で、一定の条件を満たす危険・有害な空き家を行政が指定するものです。
この指定を受けると、固定資産税が実質的に最大6倍になる可能性があります。仕組みを分かりやすく解説します。
住宅用地の特例とは何か
現在、家が建っている土地(住宅用地)には、**固定資産税の「住宅用地特例」**が適用されています。簡単にいうと、「住宅が建っている土地は固定資産税を安くしますよ」という優遇制度です。
具体的には、200㎡以下の部分は固定資産税評価額の6分の1に、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されます。つまり、更地にしてしまうと固定資産税が最大6倍になるため、「壊したくても壊せない」という逆説的な状況が空き家問題を長引かせてきた一因でもあります。
特定空き家に指定される4つの条件
空家特措法では、以下のいずれかに該当する空き家を「特定空き家等」と指定できるとされています。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態(屋根・外壁の崩壊リスクなど)
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態(害虫・悪臭・汚水など)
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態(雑草の繁茂、ゴミの堆積など)
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態
これらは「著しく」という言葉が示すとおり、よほどひどい状態でなければ即指定されるわけではありません。ただし、指定される前に「管理不全空き家」(後述)としての勧告が来る可能性があり、そこからの悪化で特定空き家に至るケースが増えています。
指定されたらどうなる?勧告・命令・代執行の流れ
特定空き家に指定された場合、行政の対応は段階的に進みます。
①指導・勧告:まず市区町村から「改善してください」という行政指導が行われます。この段階で住宅用地の特例が剥奪され、固定資産税が最大6倍になります。
②命令:勧告に従わない場合、「命令」に移行します。命令に背いた場合は50万円以下の過料(罰則)が科せられる可能性があります。
③代執行・略式代執行:命令にも応じない場合、行政が強制的に建物を解体するなどの代執行を実施し、その費用が所有者に請求されます。解体費用は建物の規模にもよりますが、一般的な木造住宅で100〜200万円以上になることも。しかもこれは「行政が行う解体」であり、所有者が自分のタイミングで業者を選ぶ余地はありません。
3. 2023年改正で新設「管理不全空き家」も要注意

2023年12月、空家特措法が改正され、新たに「管理不全空き家」という区分が設けられました。これは、まだ「特定空き家」ほど深刻ではないけれど、このまま放置すれば問題になりそうな空き家に、より早い段階で行政が介入できるようにするための仕組みです。
特定空き家との違い——指定前に手が打たれる新しい仕組み
改正前は、特定空き家に指定されて初めて住宅用地特例が剥奪されていました。改正後は、管理不全空き家として「勧告」を受けた段階で、住宅用地の特例(6分の1軽減)が適用されなくなります。
つまり、建物がまだ倒壊寸前でなくても、「適切に管理されていない」と判断された空き家は、固定資産税の優遇を失うリスクが生じたのです。これは所有者にとって、より早い段階での対応を迫られることを意味します。
早めの対処がなぜ重要か
「まだうちの実家はそこまでひどくない」と感じていても、雑草の繁茂・外壁のひび割れ・屋根の損傷などが進めば、いつ「管理不全」の調査対象になっても不思議ではありません。
私たちが経験した事例でも、「10年ほど放置していたが、まさか行政から通知が来るとは思わなかった」とおっしゃるご家族がいらっしゃいました。通知が来てから慌てて対処しようとすると、時間的・精神的・費用的なコストがすべて大きくなります。「まだ大丈夫」のうちに動くことが、結果的に一番のコスト削減になるというのが、私たちの経験から得た正直な結論です。
4. 空き家を「どうするか」——4つの選択肢と判断のポイント
リスクが分かったところで、では実際に空き家をどうすればいいのか。大きく4つの選択肢があります。どれが正解かはケースによって異なりますが、それぞれの特徴と注意点を整理しておきましょう。
① 売却する——仲介・買取の違いと費用の目安
最も一般的な選択肢です。「売る」には大きく分けて仲介売却と業者買取の2種類があります。
仲介売却は、不動産仲介業者を通じて一般の買主を探す方法です。市場価格に近い価格で売れる可能性が高い反面、買主が見つかるまでに数ヶ月〜1年以上かかることもあります。古い家や傾いた家、立地条件が悪い家は買主が付きにくく、結果的に長期間の維持費がかさむことも。
業者買取は、不動産業者が直接買い取る方法です。価格は市場価格の60〜80%程度になるケースが多いですが、最短1〜2週間で現金化できるスピードの速さが最大のメリットです。老朽化が進んでいたり、内部に大量の遺品・家財が残っていたりする場合でも、「現状渡し」で対応してくれる業者もあります。
どちらが合うかは、「価格を少しでも高く」を優先するか、「早く確実に手放したい」を優先するかによります。
また、2023年の税制改正により、**相続した空き家を売却した場合の譲渡所得税の特例(空き家特例)**が2027年まで延長・拡充されました。相続から3年以内に耐震リフォームまたは解体後に売却するなど一定の条件を満たすと、譲渡所得から3,000万円(3人以上の相続人の場合は2,000万円)が控除される制度です。売却を検討される際は、税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。
② 賃貸に出す——リフォーム費用と管理の現実
「壊したくない」「でも維持費はかけたくない」という方が選ぶ選択肢が賃貸です。家賃収入が見込めるメリットがある一方、初期リフォーム費用と入居後の管理・修繕費が必要になることを覚えておいてください。
築年数が古い建物の場合、水回り・電気・断熱などのリフォームだけで100〜300万円以上かかることも珍しくありません。また賃貸に出す以上、入居者からの修繕要請に対応し続ける義務が生じます。遠方にお住まいの場合は、管理会社への委託費用(家賃の5〜10%程度)も別途必要です。
「せっかくリフォームしたのに借り手が見つからない」という事態も十分起こりえます。地方の築古物件ほどその傾向が顕著ですので、地域の不動産市況をよく調べた上で判断しましょう。
③ 解体する——更地にした後に税額が上がる落とし穴

「古くて売れないなら解体して更地に」と考える方も多いですが、前述のとおり更地にすると住宅用地の特例が外れ、固定資産税が最大6倍になります。解体後すぐに売却・活用の目処がある場合は問題ありませんが、「とりあえず解体してから考えよう」という発想は思わぬコストを招く可能性があります。
なお、解体費用の目安は以下のとおりです(建物の規模・構造・立地によって大きく異なります)。
- 木造住宅(30坪程度):100〜150万円前後
- 木造住宅(50坪程度):150〜250万円前後
- 鉄骨造・RC造は木造の1.5〜2倍程度
(注:100〜250万円という数字は「石綿が含まれていない、あるいは軽微な場合」の相場です。)
自治体によっては、老朽危険空き家の解体に対する補助金制度を設けているところもあります。補助額は自治体によって10〜100万円と幅がありますが、解体を検討する際はまず居住地(または不動産所在地)の市区町村窓口に確認することをおすすめします。
④ 空き家バンク・自治体補助を活用する
近年、全国の市区町村が**「空き家バンク」**の整備を進めています。空き家バンクとは、空き家の情報を自治体が一元管理し、移住希望者や活用希望者とマッチングするプラットフォームのことです。
過疎地域や地方移住需要が高まっている地域では、通常の市場では売れない物件でも空き家バンク経由で買い手・借り手が見つかるケースが出てきています。また、国が推進する「空き家活用支援事業」や、地域おこし協力隊との連携事業など、活用の幅は広がっています。
「うちの実家は田舎すぎて売れない」と諦める前に、地域の空き家バンク担当窓口へ問い合わせてみることをおすすめします。
5. 空き家対策の前に必要な「中の片付け」——遺品整理・生前整理との関係
ここまで、空き家のリスクと対処の選択肢をお伝えしてきました。ただ、「売却しよう」「解体しよう」と決意しても、多くの方がそこで一つの壁にぶつかります。
「中に、親の荷物がそのまま残っているんです……」
仏壇、衣類、食器、アルバム、着物、長年使った家具——。亡くなった方の遺品や、高齢になった親御さんが長年積み上げてきた家財が残っている状態では、売却も解体も進められません。
売却・解体の前に家財整理が必要な理由
不動産業者に「現状渡し」で売却する場合でも、個人の遺品・家財はそのままでは引き渡せないことがほとんどです。業者買取の場合は対応してくれるケースもありますが、それ以外のほぼすべてのケースで**「家の中を空にする作業」が売却・解体より先に必要**になります。
「自分たちで少しずつ片付ければいい」とお考えの方もいらっしゃいますが、一人暮らしだったとしても長年の生活の荷物は膨大です。遠方から何度も足を運ぶ交通費・宿泊費・時間的コストを考えると、プロに依頼したほうがトータルコストが低くなるケースも少なくありません。
また、片付けの過程で価値が分からない着物や骨董品、古道具が出てくることがよくあります。「どうせ処分するから…」と捨ててしまう前に、買取査定を受けてみると、思いがけない価値が判明することもあります。
橙堂に相談できること
橙堂では、遺品整理・生前整理のご依頼に対応しています。「何から手をつければいいか分からない」という段階からのご相談でも、ご家族の状況をうかがいながら、一緒に整理の進め方を考えます。
私たちが大切にしているのは、「物を処分する」ではなく、「大切な記憶と向き合う時間を支える」という姿勢です。急かしたり、不要なものを無理に処分させたりすることはありません。お客様のペースに合わせて、丁寧に関わらせていただきます。
また、整理の過程で出てきた着物・骨董品・古道具については、買取査定も承っています。遺品整理と買取を同時に進められることで、「捨てる前に一度見てもらう」という手間なく、スムーズに作業を進めることができます。
「まずは話だけ聞いてほしい」というご相談もお気軽にどうぞ。訪問見積りは無料で対応していますので、どうぞご安心ください。
6. まとめ —「放置」が一番コストが高い
この記事で伝えたかったことを整理すると、こうなります。
- 空き家を放置すると、建物の劣化・害虫・防犯・近隣トラブル・行政指導の5つのリスクが時間とともに悪化する
- 「特定空き家」に指定されると、固定資産税が最大6倍になる可能性がある
- 2023年の法改正で「管理不全空き家」という新区分が設けられ、より早い段階での課税強化が可能になった
- 対処の選択肢は「売却・賃貸・解体・空き家バンク活用」の4つ。それぞれにメリット・デメリットがある
- どの選択肢を選ぶにしても、まず家の中を片付けることが先決。遺品整理・生前整理の専門家に相談するのも一つの方法
「いつかやらなきゃ」と思いながら過ごす時間は、精神的にも負担が大きいものです。そして残念ながら、その「いつか」が長くなるほど、対処の選択肢は狭まり、コストは増えていきます。
小さな一歩でいいのです。まずはご相談だけでも、ぜひ橙堂へお声がけください。
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「何から手をつければいいか分からない」「費用が気になる」-そんなお悩みも、まずはお気軽にご相談ください。
橙堂では、遺品整理・生前整理に関するご相談を無料で承っています。 訪問見積りも対応しておりますので、どうぞお気持ちが落ち着いたときにご連絡ください。
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